伝統的な
経済学では
価格は
需要と
供給によって決まるとしているのに対し、数理ファイナンスでは一物一価の法則(
無裁定価格理論)を基本的仮定として用いる。しかしこれらは矛盾するものではない。例えば
ブラック-ショールズモデルにおいては、株価と債券価格がすでに与えられたものとして、
デリバティブの価格を導く。ところがこの株価の水準がなぜその値なのかということは一切語っていないのであり、無裁定原理の枠組みでは決定できない。そこには伝統的な経済学や
CAPMなどの理論が必要となるのである。
数理ファイナンスにおいて最も基本となるブラック-ショールズモデルは、
株と
債券という2つの価格のわかっている証券を用いて、任意の
デリバティブ(株に関するものに限る)の複製を行う。このように、すべてのデリバティブが複製可能なとき、
市場は完備であるといわれる。一方で、複製できない商品が存在する市場を非完備市場と呼ぶ。完備なモデルにおいては、無裁定原理からすべてのデリバティブの適正価格が求められるが、非完備なモデルの場合は複製できない商品に関しては無裁定原理とは別の方法によらなくては価格を定義することができない。